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2019年06月13日

エイジングケア

日本はなぜガンを減らせないの?

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「がんを減らした米国、減らせない日本」について、2019年3月号にてお話ししましたが、今回は両国の根本的な考え方の違いについて触れたいと思います。

 

一次予防「食」に力を入れた米国

「予防医学」という用語があります。これは、①生活習慣の改善や健康教育などで病気にならないようにする一次予防、②病気が重症化しないよう早期発見、早期治療する二次予防、③リハビリなどで社会復帰を促す三次予防に分類されます。米国と日本は共に、膨れ上がる医療費により財政が破綻寸前になることを経験しています。しかし、この予防医学の面で、両国は違った対応を取っています。

米国は、「がん、心臓病、脳卒中などの原因は、間違った食生活である」と、食を重要視し、医大に本格的な栄養学のコースを導入しました。そう、病気にならないための一次予防に力を入れたのです。

具体的な対策としては、動物性食品(肉や牛乳など)の過剰摂取が、がんの強力な要因になっているとして、がん予防のためには、「プラントベース(植物性食品中心)のホールフード(未精製・未加工の食べ物)で構成された食事を摂ること」と提案しています。植物性食品からは、それにのみ含まれる食物繊維や植物性たんぱく、リコピン、ゼアキサンチン、インドールなどのファイトケミカル(抗酸化物質)が摂れます。さらにこういった食事は、心臓病や糖尿病、脳卒中、高血圧などの慢性病も予防可能です。

 

日本が招いた差

一方、日本では、本格的な栄養学のコースを持つ医大など未だ聞きません。よく耳にするのは、「今度、乳がんを早期発見できる素晴らしい装置が入った」などの話。相変わらず、病気の早期発見の二次予防に重きを置いているように思います。

この両者には大差がないと思うかもしれませんが、病気の発生に大きな違いを生じさせます。下のグラフのように、米国では心臓病やがんといった生活習慣病が大きく改善されましたが、日本では改善されず高止まりです。

▼アメリカ/標準化死亡率の推移(男性)

USA標準化死亡率の推移(男性) OECD現在、我が国の医療費は破綻寸前です。特に問題であるのは、日本医療をリードする医師の多くが、栄養学を踏まえた食事指導を軽視し、「薬」重視の服薬指導に傾倒しがちだという事です。すぐにでも米国を見習い、医大への本格的栄養学コースの導入を切望します。そして、栄養指導に保険点数を付けるよう政策転換をすれば、薬漬け医療からも脱却できるのではないでしょうか?古代ギリシャの西洋医学の父と言われるヒポクラテスも言っています。「あなたの食事があなたの薬である」と。

参考文献:『チャイナ・スタディー』グスコー出版 T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル著 松田麻美子 訳

 


 

コラム筆者:元井益郎

薬学博士/薬剤師/NR・サプリメントアドバイザー/日本抗加齢医学会認定指導士。

東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行い、研究結果をもとにサンプライズ製品の開発を行う。

趣味は山登りとマラソン。72歳になるが、自称年齢は54歳。2017年6月、デナリ(マッキンリー)に登頂成功。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。

元井 益郎

薬学博士/社長

1分も走れないペンギン歩きから、世界7大陸最高峰を目指す70代に。

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